大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

青森地方裁判所 平成2年(わ)28号 判決

本籍

青森県三戸郡南郷村大字島守字ケト森一三番地

住居

同県八戸市是川三丁目二番地の一〇

会社役員

高橋和夫

昭和二五年一月一四日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官金田茂出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役二年及び罰金六〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、青森県八戸市是川三丁目二番地の一〇に居住し、昭和四六年ころから東京都内を中心に型枠大工工事の請負業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、自己及び家族名義で預金するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和六二年分の実際総所得金額が七五四〇万四三四一円あった(別紙一修正貸借対照表及び脱税額計算書の総所得金額欄参照)のにかかわらず、昭和六三年二月一六日、青森県八戸市江陽二丁目九番四五号所在の所轄八戸税務署において、同税務署長に対し、昭和六二年分の総所得金額が八四六万五二〇〇円であり、これに対する所得税額は一一五万八九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額三六二八万八七〇〇円と右申告税額との差額三五一二万九八〇〇円(脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和六三年分の実際総所得金額が二億六四二万三五七九円あった(別紙二修正貸借対照表及び脱税額計算書の総所得金額欄参照)のにかかわらず、平成元年二月二七日、前記八戸税務署において、同税務署長に対し、昭和六三年分の総所得金額が一四一九万五四七〇円であり、これに対する所得税額は二九九万九六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億一三四六万四四〇〇円と右申告税額との差額一億一〇四六万四八〇〇円(脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成元年分の実際総所得金額が二億六五七五万九八三五円あった(別紙三修正貸借対照表及び脱税額計算書の総所得金額欄参照)のにかかわらず、平成二年一月三〇日、前記八戸税務署において、同税務署長に対し、平成元年分の総所得金額が三四二二万三一六〇円であり、これに対する所得税額は一二一八万二五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億二七八八万六九〇〇円と右申告税額との差額一億一五七〇万四四〇〇円(脱税額計算書参照)を免れ

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書一二通

一  門脇健一、丹ケイ子(二通)、高橋つきの検察官に対する各供述調書

一  収税官吏作成の現金、預貯金、工事未収金、車輛、設備負担金、保証金、預り金、未払金、未払消費税、事業主貸勘定、事業主借勘定、利子所得、譲渡所得、雑所得、銀行、源泉徴収税額の調査書及び訂正未払消費税、訂正譲渡所得、訂正雑所得の調査書

一  収税官吏作成の八戸税務署所在地の調査報告書

(法令の適用)

罰条 各所得税法二三八条一項、二項

刑種の選択 懲役刑と罰金刑の各併科

併合罪加重 刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項

労役場留置 刑法一八条

執行猶予 刑法二五条一項(懲役刑につき)

(量刑の理由)

被告人は、昭和六二年から建築工事の型枠大工工事の受注が増加した後も、工事現場の受注単価、自己の取り分、労務費、諸経費の記帳をせず、実際総所得金額を大幅に下回って確定申告し、三年間で合計二億六一二九万九〇〇〇円を脱税したものである。三年間の脱税額は高額であり、脱税率も高率である。なお、被告人は、工事人夫に支払う日当分の現金を自己の手元に置くほか、取引銀行に自己あるいは家族名義で預金して所得を秘匿したものであり、資産の秘匿方法は単純であった。そして、調査開始後の虚偽の領収証の偽装工作も、単純なものであった。

被告人は、摘発後深く反省し、修正申告の上本税及び附帯税を納付し、関連する地方税も納付している。そして、被告人は、平成二年八月事業を法人化し、有限会社を設立し、経理関係を改善し、税理士の指導を受けて有限会社の法人税及び自己の所得税の確定申告するようになった。また、被告人は社会福祉協議会等に合計五〇〇万円の寄付をし、妻も被告人の今後の監督を誓っている。

これら諸般の事情を考慮し、被告人を懲役二年及び罰金六〇〇〇万円に処し、右懲役刑の執行を猶予する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 柴田秀樹)

別紙一

修正貸借対照表

〈省略〉

〈省略〉

別紙二

修正貸借対照表

〈省略〉

〈省略〉

別紙三

修正貸借対照表

〈省略〉

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例